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【ネタバレなし感想】映画『テラフォーマーズ』|原作の魅力を潰した残念実写化【評価2/10】

映画テラフォーマーズのメインビジュアル

評価:2/10
ネタバレ:なし
Netflixで配信されている実写映画『テラフォーマーズ』を視聴しました。結論から言えば、原作漫画の面白さを知っているほどつらくなる、希代のクソ映画と呼びたくなる出来です。ただし、火星ゴキブリことテラフォーマーの気持ち悪い造形だけは、はっきり褒められます。

ネタバレなし:本記事では配役や設定、演出への感想に触れますが、人物名を伴う生死、戦闘の決着、物語の結末は明かしません。未視聴の方はNetflix日本向け作品ページもご確認ください。

映画テラフォーマーズのメインビジュアル
画像出典:映画『テラフォーマーズ』公式サイト
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実写映画『テラフォーマーズ』とは

『テラフォーマーズ』は、貴家悠原作・橘賢一作画による漫画を、三池崇史監督が実写映画化したSFアクションです。舞台は西暦2599年。人類が火星を住める星へ変えるために送り込んだ生物が異常進化し、その駆除のため15人の日本人が火星へ向かいます。伊藤英明、武井咲、山下智久、山田孝之、小栗旬、菊地凛子ら、名前を並べるだけならかなり豪華な映画です。

原作の魅力は、人間と昆虫の能力を掛け合わせた大胆なバトルだけではありません。人類の未来、国家間の思惑、極限状態に置かれた人間の覚悟が絡み合い、荒唐無稽な設定に妙な説得力を与えています。途方もないスケールの世界に、昆虫の生態という具体的な知識が埋め込まれている。この組み合わせが面白いのです。

ところが映画版は、その魅力を約109分へ押し込もうとして、設定も人物も感情もばらばらになっています。豪華な材料を一つの鍋へ放り込み、強火で煮詰めたのに、肝心の味がまとまっていません。原作を知らない観客には説明不足で、知っている観客には大切な要素が薄く見える。実写化で最も避けるべき板挟みに、正面からはまってしまった印象です。

映画で何が失われたのかを確かめたい方には、まず原作漫画の第1巻が適しています。登場人物が火星へ送られる理由と、異常な敵に直面した時の衝撃を本来の順序で追えるため、映画版だけでは分かりにくい物語の土台を補えます。

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原作を知らなければ、何を見せられているのか分かりにくい

この映画の最大の問題は、観客が状況を理解し、人物に興味を持つための時間が足りないことです。なぜ火星へ行くのか。誰が何を背負っているのか。手術によって得た能力にどんな意味があるのか。重要な情報は次々に提示されますが、物語として咀嚼する前に次の場面へ進んでしまいます。

原作を読んでいれば、映像の隙間を記憶で埋められます。しかし、それは映画が説明できていることにはなりません。映像作品は、初めてその世界へ入る観客も物語へ導く必要があります。本作は原作既読者の知識を当てにしているようでありながら、原作ファンが期待する人物や設定の厚みまでは再現しません。誰へ向けて作ったのかが、最後までぼやけています。

開始早々、主要人物が次々に消えていく虚しさ

ネタバレを避けるため人物名や場面の詳細は伏せますが、映画が始まってそれほど時間がたたないうちに、主要人物が次々と退場します。もちろん、容赦なく命が奪われること自体は原作の緊張感にもつながる要素です。問題は、映画ではその人物を知る前に別れが来ることです。

観客が「この人には生きてほしい」と思うには、その人の選択や関係性を見せる時間が必要です。ところが本作は、経歴を短く説明し、能力を披露し、すぐ次の衝撃へ移ります。死を重ねれば緊迫感が増すわけではありません。人物への愛着が育っていなければ、悲劇は感情ではなく処理になります。開始早々の猛スピードは驚きよりも置いてきぼり感を強め、命の重さまで軽く見せてしまいました。

俳優が下手に見えるほど、台詞と演出が噛み合わない

演技にもかなり厳しい印象を持ちました。台詞が人物の口から自然に出た言葉ではなく、設定を観客へ伝えるための文章に聞こえます。感情が高まる場面では力みが先に立ち、人物の恐怖や覚悟よりも「大げさに演じている姿」が見えてしまう。正直、ド下手に見える瞬間が何度もありました。

ただし、出演者の実績を考えれば、個々の俳優に一括して演技力がないと断じるのは違うでしょう。この映画では脚本、台詞、芝居の方向づけ、編集の間が同じ方向を向いておらず、結果として俳優の演技まで浮いて見えます。豪華キャストを集めても、人物として画面の中に生きられる設計がなければ、その豪華さは宣伝用の名簿で終わってしまいます。

映画テラフォーマーズに登場するテラフォーマー
画像出典:映画『テラフォーマーズ』公式サイト

火星ゴキブリのディテールだけは、キモくて良い

ここまで酷評してきましたが、褒められる点も一つあります。テラフォーマーの造形です。人間に近い輪郭を持ちながら、目、皮膚、筋肉のつき方に生理的な違和感がある。単なる巨大昆虫ではなく、「こちらに似ているのに、決して分かり合えない存在」として画面に立っています。

表面のざらつきや不自然な無表情、圧倒的な身体の厚みは本当に気持ち悪い。もちろん、これは怪物映画として褒め言葉です。接近した画では、触れたくない質感がきちんと伝わり、火星で遭遇したくない敵として説得力があります。物語や人物の感情が散らかる中でも、テラフォーマーが画面に現れた瞬間だけは作品の狙いが明快になります。

昆虫の能力と登場人物の関係、テラフォーマーという生物の面白さを掘り下げたい方には、公式キャラクター生物図鑑が合います。専門家の監修で生物の特徴と作中描写を結び付けており、本作で唯一よく見えたクリーチャー面の発想を、映画より体系的に楽しめます。

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漫画原作の邦画実写化が失敗する時の悪い癖

邦画の漫画原作実写化には優れた成功例もあります。しかし私は、大作になればなるほど失敗しやすい悪い癖があると感じています。長期連載で積み上げた世界観を一本の映画へ圧縮し、人気人物を大勢出し、分かりやすい見せ場を並べる。その結果、原作を原作たらしめていた因果関係や人物の感情が削られてしまうのです。

『テラフォーマーズ』は、その悪い癖がほとんど全部出ています。壮大なSF設定、異形の敵、特殊能力、豪華俳優、派手な戦闘。ポスターへ載せやすい要素は揃っているのに、一本の物語として観客を運ぶ背骨が弱い。見せ場から見せ場へ移動しているはずなのに、ジェットコースターの爽快感ではなく、ダイジェスト映像を延々と見せられているような疲労が残ります。

原作漫画は面白いのに、実写映画から入った人が「テラフォーマーズとはこの程度の作品なのか」と思ってしまったら、あまりにも可哀そうです。映画化は原作の入口になれる一方、失敗すれば看板そのものを傷つけます。本作は原作の魅力を広く届けるどころか、誤解を生む入口になってしまいました。

製作委員会形式の弱点が、完成作に透けて見える

本作の権利表記には「映画『テラフォーマーズ』製作委員会」とあります。ただし、私は内部の意思決定資料を確認したわけではありません。ここから述べるのは、あくまで完成した映画を見たうえでの推測と批評です。

製作委員会方式は、資金とリスクを分担して大規模作品を成立させる仕組みであり、それ自体が悪ではありません。しかし、関係者が増えるほど「誰に何を届ける映画か」という核が薄まり、人気IP、著名キャスト、宣伝しやすい場面といった合意しやすい要素が優先される危険があります。本作からは、その悪い側面がモロに出たように見えました。

なぜこの脚本で映画化へ進み、なぜこの編集で完成と判断したのか。原作を知らない観客へ何を手渡し、原作ファンへ何を新しく見せたかったのか。完成作から、その責任ある一本の意志を読み取れません。多くの人と企業が関わったはずなのに、作品の中心だけが空洞になっている。それが本作で最も残念な点です。

完成映像の外側にあった制作意図まで確かめたい方には、映画公式のVISUAL BOOKがあります。場面写真、出演者インタビュー、設定資料やCG制作資料が収録されており、最終的な映画では伝わりにくかった企画と美術の狙いをたどる資料になります。

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良かった点と悪かった点

良かった点

  • テラフォーマーの生理的に気持ち悪い造形
  • 皮膚や筋肉の質感から伝わる、敵の圧倒的な身体性
  • 原作が持つ昆虫能力の発想を、実写映像で見られること

悪かった点

  • 原作を知らない観客には理解しにくい説明不足
  • 設定と人物を詰め込みすぎた、まとまりのないストーリー
  • 主要人物が次々に退場し、感情移入する前に処理される構成
  • 台詞、演出、編集が噛み合わず、俳優の演技まで拙く見えること
  • 豪華キャストと派手な設定が、物語の面白さへ結び付いていないこと
  • 原作漫画の評価まで下げかねない実写化になっていること

総合評価:2/10

実写映画『テラフォーマーズ』の評価は2/10です。原作を知らなければ話へ入りにくく、知っていれば削られた魅力が気になる。人物の感情が育たないまま死と戦闘が続き、豪華な出演者も演技が下手に見えるほど、脚本と演出が噛み合っていません。

なぜ、これで一本の映画として完成させたのか。見終わった後に残ったのは、物語の余韻ではなく、その疑問でした。漫画原作の邦画実写化が失敗する時の問題を、教材のように並べた作品です。原作が持つ世界観、人物、昆虫の知識、残酷さの中にある覚悟を、映画はほとんど一つに結び直せていません。

それでも2点を付けたのは、テラフォーマーのディテールが本当にキモく、敵の存在感だけは実写化の意味を感じられたからです。そこだけは褒められます。しかし、その造形を見るために約109分の映画全体を薦められるかと問われれば、答えは厳しい。原作漫画が面白いだけに、ここまで残念な映画になったことが何より悲しい一本でした。


作品情報・画像の参考出典

著作権・権利帰属

当該作品の作品名、画像、映像、ロゴ、キャラクター、音楽、商標等に関する権利は、©貴家悠・橘賢一/集英社 ©2016 映画「テラフォーマーズ」製作委員会をはじめとする各権利者に帰属します。

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